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Posted by - 2024.05.01,Wed
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Posted by Ru Na - 2017.09.17,Sun
実は私、学生時代に、“すずめ”とあだ名が付いていた頃がある。
小柄で丸顔で、ぴーちくぱーちくと、ひとりでしょっちゅう囀っていたので、
スズメに似ている、いやスズメそのもの、と周りから見られていたらしい。

私は美大の油絵科だったが、同期の彫刻科の連中とよく集まって、
喧々囂々と青臭い芸術談議をしたものだった。
家のごく近所の傾いた古い長屋に、彫刻科が二人下宿していて、
路地に面した2階の部屋が主なたまり場になっていた。
(1階は、彼らは勝手に床をコンクリートで固めて、制作場にしていた。)
皆夢中で夜通し、芸術論、人生論をまくしたてていたものだ。
それがその頃一番楽しかった。
だから、普通大学の学生が集まって、恋愛やファッションの話をするのを
聞くと、まるで別世界のように感じたものだった。

近所とはいえ、自宅生の私はいい加減に帰らなければならない。
「わたしもう帰るね。」と一人引き上げる時、
「すずめ帰るってよ。・・・さあここから飛んで行きなよ。」と
誰かが必ず窓を開けた。
「すずめは鳥目なので、地上を歩いて帰ります。」
(さすがに2階の窓から出入りしたことはなかった。)

当時(高校時代から)私は漫画家のY.S.さんの同人会に所属し、
同人誌に漫画も載せていたが、その頃の作品に、
自分と自分の周りの美大生の何気ない日常を描いた「わたしはスズメ」
なんてタイトルを付けたものまである。

高校時代、美術部の部室があった古い記念館横は、
どういう地形的条件なのか、鳥の声がよく反響した。
四方全てではなく、南側の木造の外壁近くに立つと、小鳥の声が
天から星が降るように、それでいて空気に白く溶けていくように
不思議な色彩と響きを帯びて聞こえた。(今でもそうだろうか?)

立地条件がいい場所にある高校なので、今思えばかなり多くの種類の
野鳥が行き来していたはずだが、
その頃は鳥の種類に興味はなく、ただスズメの声だけは聞き分けられた。
記念館横の、天から降ってくる銀の響きのようなスズメの声が、
今でも耳の底に残っている。
建物に激突して脳震盪を起こし、私の手の中で亡くなったスズメを
埋葬したのも、この場所。
多感な時代、スズメと共に確かに私の心の何かを埋葬した。
あれは何だったのだろう。

スズメは四十数種類の声音で鳴くという。
とある公園で野鳥調査をしていた山階鳥類研究所の人に、そう聞いた。
それら全てを聞き分けられるのは、よほどのベテランだとも。
でもやはり、幼い頃からなじんだスズメの鳴き方の多くは、
野鳥に特別関心がなかった頃でも、他の鳥とは違う、と聞き分けて
きたような気がする。















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