忍者ブログ
見たこと、聞いたこと、感じたこと、考えたこと。
[223] [222] [221] [220] [219] [218] [217] [216] [215] [214] [213
Posted by - 2024.05.03,Fri
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by Ru Na - 2012.07.22,Sun
NHKFMの「名曲の楽しみ」は、音楽評論家・吉田秀和氏による、
一人の作曲家をとりあげ、その全曲を連続放送する長寿ラジオ番組である。

吉田秀和氏がラフマニノフの連続放送中の5月に亡くなって、
途中で終わってしまうのかとがっかりしていたら、
氏の生前に録音されたものが先週まで放送され、独特の語り口で番組の終わりに、
「それじゃ、また。」といつものように締めくくられていたのだが、
収録されていたのはその回までだった。

今週から、氏が残したメモによるシベリウスのシリーズが、
番組のディレクターの語りによって始まった。
放送が年内いっぱい分くらいのメモが残っているらしい。
淡々としたディレクター氏の話しに、吉田秀和さんの声が重なってくるような気がした。

いつも新たな作曲家のシリーズが始まる度に、あの曲にはどんな演奏家のものを
取り上げるのだろうと、予め想像しては楽しんでいたが、
今回も、シベリウスのピアノ・ソナチネや小品には、きっとグレン・グールドの演奏が
選ばれているのだろうと想像して楽しみにしている。

シベリウスといえば、交響詩「フィンランディア」やバイオリン協奏曲ニ短調が
最も知られた曲かもしれない。
私にとってはまず、交響詩「トゥオネラの白鳥」の作曲家である。
中学時代この魅惑的な題名を少女漫画で知り、実際に聴いたのはその数年後だった。

resize6209.jpgフィンランドの神話「カレワラ」に
出てくる伝説の白鳥。
この世と冥府の間に横たわる
トゥオネラ河に浮かぶ大白鳥は、
あの世への手引きをする。

北欧の冷たく白い空気に
融け入るような響きを持つ
この曲を聴くと、
流れる霧で辺りが包まれて
いくような心地にさせられる。



                
                      河北潟のコブちゃんにトゥオネラの白鳥に扮してもらいました。


美大生時代の西洋美術特論で、人間には北方系と南方系のタイプがあって、
北方系の人は、ゴッホの様に南の明るい光に惹かれ、南方系は北に憧れる傾向がある
という、興味深い話を聞いた。
冬が長く暗い北陸の私は、やはり南の明るい土地に行ったら人生観が変わるような気がして、
地中海沿岸の都市に留学した。
(その頃は夏が嫌いではなかったし、金沢の夏はこんなに暑くなかったので、
むしろ、寒さと暗い冬から脱出したかったのだった。)

しかし北方系の本性は従いて回って、南の大胆な形と色の植物より、
繊細で微妙な色彩を持つものが好き。音楽も文学もスペインよりドイツのものに惹かれる。
そうひどく暑くない南仏の、カラッとした大気と陰の青さ。糸杉とオリーブ畑が続くプロヴァンスは
私の第二の故郷だけれど、同時にやはり北に惹かれ、回帰したい自分がいる。

resize6197.jpg





  バルト海
  夏の夕暮の風景











知っている北欧の作曲家は、せいぜいグリークとシベリウスだが、
いずれも楽曲の中に何か独特の響きがあって、(北の白い空気と云えばいいのか)
それが心をいたく捕えるのである。
例えばグリークのピアノソナタホ短調。
グリークが音楽院の学生だった頃の習作というが、とてつもなく暗い曲である。
そしてグリークの遠縁にあたるグレン・グールドがグリークの曲で録音を残した唯一のもの。
これまた、何があったの?と問いたくなるくらいグールドにしてはとても暗い演奏だが、
その第2楽章は、北欧の空気づくしで、聴いても弾いても白夜のような雰囲気に
心底涼しい心地がする。

シベリウスの3つのソナチネや3つの抒情的小品が入ったCDは、
グレン・グールドの数ある録音の中でも私のお気に入りで、
特に暑い夏に聴くと、芯から涼しい心地になる。
雪に覆われた林の中の小道を、橇の鈴音が遠ざかっていくようなフレーズは、
本当に極寒の空の彼方にいつまでも銀の残響が消えずにいるような不思議な響き。
と思っていたら、グールドはこの録音の時、音の空間を作るため
実験的にいつもの倍のマイクを使ってみたということを、後に知った。
この魅力的な曲集の楽譜が欲しいと思って、今だ手に入れることができない。

resize6195.jpg


 ストックホルムから
 ヘルシンキに向かう
 夜行船の中から。
 いつまでも日が
 沈まない。












貧乏学生の夏休みの、リュックを背負ったせわしない貧乏旅行で訪れた北欧。
今となっては、もっとじっくり回ればよかったと思われる。
せめてシベリウスを聴いて、北の大地に思いを馳せよう。

resize6199.jpg


 

  海上から望む
  ヘルシンキの街。











resize6207.jpg

   


   ヘルシンキの港近く。
   コブハクチョウが
   沢山海に浮かぶ様を
   撮影しなかったのが残念。






resize6208.jpg



PR
ブログ内検索
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
Ru Na
性別:
女性
職業:
金沢市在住の美術家
訪問者
最新TB
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]