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Posted by - 2024.04.21,Sun
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Posted by Ru Na - 2011.11.27,Sun
今朝は放射冷却で思い切り冷え込んだが、
午後の日差しは暖かで、庭のモミジが金色に輝いた。

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時は晩秋。
こんな穏やかな光に透いた葉を見ていると、
このように明るい色の髪をしていた友を思い出す。

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先日の、内川鎮守の森ギャラリーで、
久しぶりに会った旧友Nさんに、
共通の友人が亡くなったと聞いた。
もう4年も前のことだという。

長く音信不通になっていた
フランスの女友達。

最後に会ったのは、
仏留学から帰国した後
久しぶりに訪れたフランス
でのこと。
仏北東部のトロワの近くの
彼女の家を訪ね、泊めてもらった。


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高校時代からの知り合いのNさんは、いろんな仲間を集めて、廃校でキャンプしたり
海辺でバーベキューをしたりと、いつも何か楽しい企画を思いついては
人の輪を広げていく人なので、そんな遊び仲間の中に、
日本人男性と結婚して金沢に住んでいた彼女も、いつの間にか加わっていた。

私が仏留学する前は、彼女に仏会話を教えてもらったりもした。
当時は鼻が高いのを気にして、日本人のように低くなりたいと言っていた。
明るい色の細い髪の毛を私がほめたら、冬に生える髪は色が濃くなるのよ、
と笑った。
最初は日本語をほとんど話せず、あまり金沢の生活は好きではないようだった。
というより、男性に従う日本女性の慣習や、儀礼的な事が気に入らなかったらしい。
ボリス・ヴィアンの「墓に唾をかけろ」の詩が好きだった。


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パリから電車に乗り、彼女の住む町に向かう途中、
車窓にはなだらかな丘陵に色づいたぶどう畑が広がり、
まさしく黄金の秋の豊穣な風景。今でも目の奥に焼き付いている。

町の静かな一角にある新しいアパルトマンに、彼女は小さな娘さんと住んでいた。
日本人のご主人とは少し前に離婚したところ。
フランスに移ってから、仕事の関係かノイローゼ気味だったご主人が、
娘さんを道連れに自殺を図ったというショッキングな話をきいた。
まだ幼い娘さんの頬には、その時の傷が生々しく残っていた。

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  3人でトロワの町に出かけたり、
  夜は近所に住む友人宅に
  食事に招かれたりして
  楽しく過ごした。
  その時の皆の会話は、
  実存主義者の溜まり場だった
  私の知らない時代の,
  サンジェルマン・デュ・プレの
  カフェの香りがした。
 
 
  あんな大変な思いをしたのに
  生きることにとても積極的で、
  リベラルな良い友人達に囲まれて、
  私は安堵と共に頼もしさも感じていた。


 



「来年になったらトロワに引っ越して看護婦の研修を受けるのよ。」
と聞いて駅で別れてから、私は南仏や南独、ベルリンなどを駆け回り、各地の友人を訪ね、
アルビの教会では、ベトナム戦争従軍後にフランスに亡命したというハンガリー人の老人と
語ったり、クレルモンフェランの丘では、失業して物乞いをしているという青年と話し込んだり、
色んな風景と共に、様々な人生との出会いを山ほど抱えて、ひと月後に帰国した。


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帰ってから、お礼の手紙を書かねばと思いつつ、
次の展覧会の準備などに追われ、うかうかしているうちに日が過ぎて、
気がついたら彼女はもう新し住居に移っている頃。新しい住所は知らない。
翌年も、展覧会のためベルリンに行ったが、住所を知らぬままで連絡できなかった。
そのうち誰かに聞いたら多分わかるだろうと、呑気に構えていたら、
私を取り囲む状況も徐々に変化し、忙しさにかまけてそのままになってしまったのだった。

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すっかり大きくなった娘さんが、Nさんにその訃報と共に
- 私は日本が嫌いです。連絡はこれが最後です。 -
と知らせてきたそうだ。
長く便りせぬ金沢の友を、彼女は薄情だと怒っていたのだろうか。
もし再び会えたなら、話しかけたいことが沢山あるのに。

私は時々一緒に話したことを思い出すのよ。
いつか私が貸したジャン・コクトーの本はどうしたのかしら。
感想を聞くのを忘れていたね。
あの翌年に知人の紹介で、パリでボリス・ヴィアン基金を主催している
ボリス・ヴィアンの親友だった人に会いに行ったのよ。
いつか私の作ったラタトゥイユを、フランスの味そのもの、さまになってると褒めてくれたね。
あれはいつのことだったか、一緒に三小牛山の奥にカタクリの花を見に行ったでしょう。
近くの空き地で、ラジコンのヘリコプターを飛ばせている人たちがいたでしょう。
あの時の花と空の色をあなたは憶えていたかしら。
 
 
 

 






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