震災から2週間が経ったが、いまだ手のつけようがない状態の被災地も多く、
連日胸の痛むような被災地の様子が報道されている。
あの大震災の日の前後から痛みだした左足のくるぶしが、しだいに腫れて、
にもかかわらず、引きずった足で外出したり、無理しすぎたのか、
ついには左足が腫れに腫れて歩けなくなり、
余震が起きるたび、もし今ここも地震にみまわれてもこんな状態じゃ
避難所まで行くこともできないなあと、痛みでぼんやりする頭で考えていたのだったが、
ようやく腫れもひいてきて、やっと両足で歩けるようになった。
先の展望がまだ見えない避難生活を送っている方々が大勢いる。
持病を抱えての避難所暮らしは、どんなに困難で辛いことだろうと、
想像するだけで我身も痛みだす。
福島第1原発は、間一髪で最初のカタストロフィーを何とか抑えた観があるが、
すでに放出されてしまった放射能が、かなり深刻に土壌や農作物に被害をもたらしている。
よりによってこんな時に、風向きが海から陸方向になって雨が降るなんて、
何と天は非情なことか。
ヨウ素による関東の水汚染は、ヨウ素の半減期が短いことから
次に大量の放射能放出の事態が起こらなければ、しだいに収まるだろうが、
依然、放射能の放出は続いている様子で油断はできない。
小さな子供を持つお母さん達は気が気ではないだろう。
政府や報道機関の発表をすべて嘘と決め付けるのもどうかと思うが、
被災地に対する具体的な情報が足りず、また伝えるのが遅いというのは問題である。
原発事故の直後、新潟県では放射能計測地を2倍に増やし、1時間毎のデーターを発表し、
誰でも簡単に見ることができる。
石川県でも一応測定はしているらしいが、新潟県のようにもっとオープンにしてほしい。
新潟県知事が朝日新聞のオピニオン欄に載せていた文には、
国や東電が、福島県で同様の措置を取っていないことに対する苛立ちが感じられた。
それにしても、チェルノブイリ後、日本ではまだ重大な原発トラブルが起こっていなかった時期、
チェルノブイリのドキュメント映画を何本も見、反原発の講演会なども聞きに行ったり、
広瀬隆の「危険な話」をはじめ、原発や放射能の怖さを書いた本を何冊も読みあさり、
原発や放射能はこんなに危険と、事あるごとに周囲に言ってはうるさがられていた頃の
新聞社の姿勢に比べ、今回は災害の深刻さが違うとはいえ、隔世の観がある。
当時、地方紙の若い記者と話していた時、「うちの新聞にも原発の危険性を載せたいけれど、
そんなことしたら社を追い出されるだろうなあ。」とぽろりとこぼしたのを憶えているが、
その同紙が、-原発重視のエネルギー政策の転換が求められる。-
-志賀原発がなくても昨夏の猛暑に電力不足にならなかった。-
という記事を載せるまでになった。
他紙も分かりうることをなるべく詳しく書こうと、図説を競うように載せている。
(まだ、何人も炉心で起きている事を、近づいて実際に目で確かめられない状態なので、
全ては推測だが。)
楽観論も悲観論も、なるべくいろんな人の意見を載せようという姿勢も、
以前より多く感じられる。
TVにしろ新聞にしろ、真に受けられるのは、多くてせいぜい6割くらいと、
日頃批判的に見ている私だが、今回の事故で分かったのは、
原発の発電のしくみや構造を、いかに自分があまり理解していなかったのかという事。
どこが、何が、危険を誘発するかを知らずに、ただ漠然と怖いと言っていたのだった。
以前読んだ反原発の本の中で、8割くらい鵜呑みにしていた記述の信憑性も
今ではかなり疑っている。
高木仁三郎氏がもし生きていたら、どんな意見を述べるのだろうか。
氏の不在が残念である。
いろんな人が其々の立場や知識でいろんな意見を述べているが、
10人の専門家の意見が食い違い、10通り見方があるのも当たり前。
この事故は史上初のシチュエーションだらけである。
だから、一人の人間が全て正しい事を把握している、などということはまずありえない。
人間にできるのは、過去のデーターから近いケースを探し出し、結果を推測すること、
それに対して最善の方法を考え出すことだけ。その方法も、一通りではない。
そして、いろんな情報で流される放射線量の数値が、
客観的に定点観測されたものかを見極めることも必要である。
とにかく、日々深刻さに直面している避難地域の状態を一刻も早く改善すること。
情報が錯綜する中で、いかに確実と思われることを摑み出していくか、
自分が知ったことだけが正しいと決め付けないこと、
他者と意見が違っても、感情的にならないこと、などが今重要だと思う。
(こと原発に関して、どうしてこんなに感情的になってしまう人が多いのか。)
私としては、直接身に被害を感じている、中国大陸からやって来る、光化学スモッグと同様の
日本海側の大気汚染に対しても、もっと世が騒いでもいいと思っているのに。
(これらもかなり健康上の危険度が高いと思われる。)
とにかく、冷静に計測データーの数値の変移を見守り、いたずらに騒いで
命をつなぐ物流の妨げにならないようにしなければならない。
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