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Posted by Ru Na - 2013.12.27,Fri
国際交流サロンでの二人展「森の二しずくⅡ」が無事終了。

   

年末で悪天候続の中、足を運んでくださった方々に感謝します。

折しも会期中の24日、クリスマスイヴの日に、フレデリック・バックが亡くなった。
ジャン・ジオノの「木を植えた男」を、繊細な鉛筆画による絵本とアニメーション映画に
制作し、世界中の多くの心に木々への愛情を呼び覚ましたカナダ在住の画家である。

南仏プロヴァンスの、吹きすさぶ強風で焼けた土地に、
(実際プロヴァンスには、その穏やかな気候というイメージとうらはらに
強烈なミストラル-北風-がもたらす厳しい自然がある。)
日々のつつましい祈りのように、独り黙々と団栗の実を植え続け、
森を再生し、その地域の荒廃した人々の心までも蘇生した 無名の羊飼い、
最後まで自分の為す事に気負いもなく、誰に告げるでもなくやり遂げた
一人の男の物語。

      

フレデリック・バックの描く男の、土に種を植えるその無骨な指先の
柔らかさ、優しさ、愛おしさの表現に、いたく心打たれた。
彼の他の映像作品も、人間の文明、産業で瀕死の状態になった地や海や川が
再生する希望を謳っている。

    



私にこの本と映画を教えてくれた友人は、この物語に感銘を受け、
その後砂漠化した土地の植樹運動に参加した。
 丁度その24日、私も工事中の河岸の緑地が少しでも残るように、
河川課に交渉していたのだった。

展覧会場の古い屋敷には美しい庭がある。
自然のままに生う草木と、人の手で管理された日本庭園の樹木は違うが、
この交流サロンの管理人が慈しんで手入れしている木々でさえ、
迷惑だから切って欲しいと、近辺の住民がクレームをつけるという
信じられない話を聞いた。

    

近頃スズメが群をなして木に止まるので、そのうち鳥がうるさいと
文句を言う人がでてくるでしょう、と管理人。
サギのコロニーの記録映像の前で、見に来て下さった人と
防災や工事や自然環境保全などいろんな話しをしたが、
中央公園の木の伐採問題について、「私は伐採が正しかったと思う。」
という意見にも出会った。
日頃色んな生きものに暖かなまなざしを注いでいるその人は、
公園の植え込みが不審者の隠れ場所になったり、
茂りすぎた木が地上を暗くしているのを心配していたのだった。 
木一本についても色んな見方があり、其々が色んな考えを正しいと
思っているのだが、公共事業となると、その折り合いをつける
ポイントの位置が問題なのである。
そして近年ますます「木を植えた男」の対極に偏っている気がする。

展覧会場は蔵のギャラリーがメインだが、
和室の床の間に飾る作品を、作家の意見や希望を取り入れながら、
サロンの管理人がコーディネートするのがこのスペースの特徴である。
専属の華道家が生ける花と調和し、あくまでも「和」の空間の静けさが
保たれるように、作品を設置しなければならない。

今回管理人が決めた3箇所の床の間に、そのために準備した作品のパーツを
自由に設置してよい事になっていたので、
下の作品のように、3箇所すべて立体的に設置しようと考えていた。



ところが、他の2箇所に先ず、奥の面を作る作品パーツを設置してみたら、
これ以上何も要らないくらい、床の間の空間にマッチしてしまった。

 

床の間という和室の特別な場所は、“過剰”より、出来る限り削ぎ落とすことで、
かえってその“場”の美が饒舌になると、改めて目が覚める思いがしたのだった。



メイン会場では、空調の効果で、作品はいつも緩やかに回転していて、
全体の形が常に変化しているのだが、戸を明けて人が出入りする度、
入り口から流れ込む外気が空調の暖かい空気とぶつかって
作品が急に大きく回転するのが、なかなか好評だった。



最終日は時折雪が降り、庭の苔の上に薄っすらと白粉を刷いていた。



            

展覧会を無事に終え、作品を持ち運ぶ私の手の上にも粉雪が降りかかり、
背筋がすっと伸びる想いがした。
 
   
     
     
     
     
     
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金沢市在住の美術家
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