1月始め、凍った道で自転車ごと転倒して左膝に怪我してしまった事は以前にも書いた。
血だらけになってようやく家にたどり着いて、膝下にぽっかり空いた穴に驚いたにも
関わらず、その頃はそんなに重大な怪我とは思ってはいなかった。
翌日整形外科医院に行って、骨は無事だったものの、
縫いたくてもこんなにごっそり皮膚の下部組織ごと無くなってしまったのでは無理。
と、医者に言われても、2〜3週間で治る気でいた。
普通身体にこんな大きな穴が開いたら、とんでもない痛さのはずが、
寒さで感覚がなくなっていたせいか、たまたま神経の通う場所を外れたのか、
不思議なことにそんなにひどく痛くなかったので、気楽に考えていた。
このような傷は消毒して乾燥させるのではなく、皮膚から滲み出てくる浸潤液をそのままに、
傷口を保護シートで被って皮膚組織の自然再生を促すというのが、最近の治療法の
主流らしい。その浸潤液のおかげで痛みも少ないという。
また、血行を良くするため歩くのも奨励される。
それで膝をそう曲げなくても歩ける平地を少し歩くように心がけた。
ゆっくり数歩進んで立ち止まり、鳥を眺め写真を撮る、という鳥見のペースが最適。
このケガのせいで、椎間板ヘルニア用の日頃のリハビリ体操が十分できないので、
川原に行っては、柔らかい土や雪の上を長靴でゆっくり歩き回ってくると、
腰や背中の調子も整えられた。
最初の2週間ほどで傷口が若干狭まったが、その後進展なし。
医院に行く度、良くならないなあ、と言われ、薬浴や色んな軟膏を次々と
試されるが、傷口はそのまま変わらずで、がっかりするの繰り返し。
今度はステロイド系を試してみようと、自分でも毎日塗れる薬を処方され1週間。
心持ち皮膚再生の兆しが見えてきたと先生は言うが、
用事で少々無理になったかもしれない街歩きをした後、膝がひどく痛くなって
以前よりずっと歩きにくくなっていた。また体調も芳しくない。
傷口の周囲が黒くなっていて、「壊死」の文字が頭をよぎる。
いつもは冬の寒さが嬉しいくらいなのに、この冬の異常低温が、
傷のせいで暖かいお風呂に十分浸かれない身に相当こたえているよう。
ともかく、しばらく通院の間隔を開けることが許されたので、ようやく
アレルギー体質改善の漢方薬を出してくれるかかりつけの医院にも行く時間ができた。
健康全般何でも相談できる先生に傷口を見せると、とたんに険しい表情になった先生が、
- このままでは1ヶ月経っても状態は変わらないでしょう。
アレルギーの痒み緩和よりまず傷が回復しやすい血行を良くするお薬を出しましょう。-
と処方されたのがこの漢方薬。
この薬の処方に最初ギョッとしたらしい、いつも親しく話している薬局の人が言うには、
- これは通常、がんの治療で衰弱しきった患者さんの体力を取り戻すための、
最後の手段として使われる漢方薬です。-
何だか自分がとっても重症患者のような気がしたのだった。
実際、家族は皮膚移植のため入院しなければならないのではと、
ずっと杞憂しているし、
あまりにも治りが遅く歩きづらそうな私を、友人たちがやたら心配して、
大きな総合病院に行った方がいいよ。とか、出歩いては駄目。と言うのである。
医院の帰り、いつもはたいして時間がかからない道が、
このところ増ます歩きにくくなっている私には果てしなく遠いものに思えた。
川原を歩いていると平気なのに、街中は随分障害物が多いのが分る。
商店街の歩道などは少し傾斜していたり、歩道と車道の間の段差、
建物の入口の階段、固さの違う色んな素材の敷タイル。
ケガした足で歩くと、街がいかにバリヤフリーに程遠いかが実感できる。
さてこの漢方薬、お湯に溶かして飲むのだが、甘くてなかなか美味なのである。
今まで色んな漢方薬を飲んだが、美味しさではこれが一番。
先日からの膝の痛さはそのままだが、傷口の端のところが若干浅くなって
きたような気がする。このまま普通に動けるまで回復してほしい。
この究極の漢方薬とステロイド軟膏の効果を、また報告しますね。
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