見たこと、聞いたこと、感じたこと、考えたこと。
Posted by Ru Na - 2012.02.10,Fri
去年の12月、映画 「グレン・グールド The Inner Life」 を劇場で見た頃、
現在日本で手に入るグールドの映像のDVDで、まだ私が観ていないものが在ることに気づいた。
劇場未公開の「グレン・グールド エクスタシス」。
ネット上のカスタマーレヴューの点数はいたって低く、曲の断片しか聞かせてくれない、や、
G.G.関係者へのインタヴューばかりで肝心のグールドの映像が少なすぎる、
といった趣旨の書き込みが多かった。
新品はもう販売しておらず中古品のみ。注文して届いたものを、
さてどんなものだろうと観てみると、私には興味深い点が幾つもあった。
カバーケースには、恰好のグールド入門編」と書かれているが、
今からグールドの事を新たに知りたいという人には、確かにあまり面白くないかもしれない。
むしろG.G.についてある程度知っている者向きのように思われた。
この映像は、グールド没後25年の2007年に、カナダで行われた国際シンポジウムや
色んな記念行事の一環として、TV放映用に制作されたものではないだろうか。
B.モンサンジョンなど、グールドの直接の友人達の他に出てくる人の多くは、
カナダではよく知られている文化人なのだろう。
グールドの映像としては、去年発売されたカナダ放送協会所蔵の映像を集めた10枚組DVD、
GLENN GOULD on TELEVISION で彼の演奏風景がたっぷり見られる。
(1992年にリリースされた「グレン・グールド コレクション」は、B.モンサンジョンが
このアーカイヴを元に編集したもの。)
ただ日本語字幕がないので、英語のヒアリングが苦手な者にとっては、
グールドの曲説明が十分分からなくて、ストレスも溜まる。
早く日本語版が出て欲しいものだ。
「グレン・グールド エクスタシス」の中に、現在カナダを代表するピアニストの一人、
アンジェラ・ヒューイットへのインタビューが出てくるのが、嬉しい驚きだった。
A.ヒューイットはカナダ出身でバッハを多く弾くことから、よくグールドと比較されて、
本人はもうあまりグールドを引合いに出さないで、と言っているらしいと聞いたことがあるが、
彼女のピアノの先生が、グールドの師ゲレーロ氏の婦人だったとは知らなかった。
A.ヒューイットを日本に最初に紹介したのも吉田秀和氏だと思う。
私も氏のラジオ番組で知って、その独特の音色と爽やかさに心惹かれて、
数年前、大阪でのリサイタルを聴いた。
コンサートの後のサイン会で、アンジェラさんは一人々に気さくに話しかけていた。
フィルムの中のアンジェラさんは、その時私が感じた陽気で飾らない人柄そのままの表情で、
グールドへの賛辞を述べていた。
そのコンサートで聴いた、バッハの「フランス風序曲」の音色が耳に残って、
ずっと頭から離れなかった。
この曲が入ったCDを購入して再び聴いたのはずっと後だが、
その音色は記憶の中のものと変わらなかった。
A.ヒューイットは近年、FAZIOLIピアノを愛用し、コンサートにも持ち込んでいるという。
このピアノを使用する以前の録音のCDを(F.クープランなど)何枚か持っているが、
やはり彼女特有の音の響きがある。
ピアノの音が独り言のような人の声に聞こえるのである。
グレン・グールドの音色に関しても、私は人の声を感じる。
様々な恋の事件は、この天才ピアニストの人生観に何らかの影響を及ぼしては
いるのだろうが、ごく初期の録音から、グールド独特の音色や音の語りかけは一貫している。
ブラームスの間奏曲集は染入るように美しい。
この瞑想するような静けさは、グールドが亡くなる前再録音したゴールドベルグ変奏曲に
通じるものがある、と長年思っていたら、このブラームスはグールドが若い頃の録音だった。
あの感動的なベートーヴェンの最晩年3大ピアノソナタにしても、早い時期の録音である。
年代をあまり気にしないで聴いていて、人生への達観が感じられるような演奏はみな、
晩年の録音だと最初思い込んでいたが、それの多くが若い頃の演奏と知って驚くのは、
私はグールドの存命中のリアルタイムの歩みを知らず、没後に録音をまとめて聴いたから。
まるでこの人の人生は、ゴールドベルグ変奏曲のように円を描いて循環しているのでは、
とさえ思えてくる。天才とはこういうものであろうか。
現在日本で手に入るグールドの映像のDVDで、まだ私が観ていないものが在ることに気づいた。
劇場未公開の「グレン・グールド エクスタシス」。
ネット上のカスタマーレヴューの点数はいたって低く、曲の断片しか聞かせてくれない、や、
G.G.関係者へのインタヴューばかりで肝心のグールドの映像が少なすぎる、
といった趣旨の書き込みが多かった。
新品はもう販売しておらず中古品のみ。注文して届いたものを、
さてどんなものだろうと観てみると、私には興味深い点が幾つもあった。
カバーケースには、恰好のグールド入門編」と書かれているが、
今からグールドの事を新たに知りたいという人には、確かにあまり面白くないかもしれない。
むしろG.G.についてある程度知っている者向きのように思われた。
この映像は、グールド没後25年の2007年に、カナダで行われた国際シンポジウムや
色んな記念行事の一環として、TV放映用に制作されたものではないだろうか。
B.モンサンジョンなど、グールドの直接の友人達の他に出てくる人の多くは、
カナダではよく知られている文化人なのだろう。
グールドの映像としては、去年発売されたカナダ放送協会所蔵の映像を集めた10枚組DVD、
GLENN GOULD on TELEVISION で彼の演奏風景がたっぷり見られる。
(1992年にリリースされた「グレン・グールド コレクション」は、B.モンサンジョンが
このアーカイヴを元に編集したもの。)
ただ日本語字幕がないので、英語のヒアリングが苦手な者にとっては、
グールドの曲説明が十分分からなくて、ストレスも溜まる。
早く日本語版が出て欲しいものだ。
「グレン・グールド エクスタシス」の中に、現在カナダを代表するピアニストの一人、
アンジェラ・ヒューイットへのインタビューが出てくるのが、嬉しい驚きだった。
A.ヒューイットはカナダ出身でバッハを多く弾くことから、よくグールドと比較されて、
本人はもうあまりグールドを引合いに出さないで、と言っているらしいと聞いたことがあるが、
彼女のピアノの先生が、グールドの師ゲレーロ氏の婦人だったとは知らなかった。
A.ヒューイットを日本に最初に紹介したのも吉田秀和氏だと思う。
私も氏のラジオ番組で知って、その独特の音色と爽やかさに心惹かれて、
数年前、大阪でのリサイタルを聴いた。
コンサートの後のサイン会で、アンジェラさんは一人々に気さくに話しかけていた。
フィルムの中のアンジェラさんは、その時私が感じた陽気で飾らない人柄そのままの表情で、
グールドへの賛辞を述べていた。
そのコンサートで聴いた、バッハの「フランス風序曲」の音色が耳に残って、
ずっと頭から離れなかった。
この曲が入ったCDを購入して再び聴いたのはずっと後だが、
その音色は記憶の中のものと変わらなかった。
A.ヒューイットは近年、FAZIOLIピアノを愛用し、コンサートにも持ち込んでいるという。
このピアノを使用する以前の録音のCDを(F.クープランなど)何枚か持っているが、
やはり彼女特有の音の響きがある。
ピアノの音が独り言のような人の声に聞こえるのである。
グレン・グールドの音色に関しても、私は人の声を感じる。
様々な恋の事件は、この天才ピアニストの人生観に何らかの影響を及ぼしては
いるのだろうが、ごく初期の録音から、グールド独特の音色や音の語りかけは一貫している。
ブラームスの間奏曲集は染入るように美しい。
この瞑想するような静けさは、グールドが亡くなる前再録音したゴールドベルグ変奏曲に
通じるものがある、と長年思っていたら、このブラームスはグールドが若い頃の録音だった。
あの感動的なベートーヴェンの最晩年3大ピアノソナタにしても、早い時期の録音である。
年代をあまり気にしないで聴いていて、人生への達観が感じられるような演奏はみな、
晩年の録音だと最初思い込んでいたが、それの多くが若い頃の演奏と知って驚くのは、
私はグールドの存命中のリアルタイムの歩みを知らず、没後に録音をまとめて聴いたから。
まるでこの人の人生は、ゴールドベルグ変奏曲のように円を描いて循環しているのでは、
とさえ思えてくる。天才とはこういうものであろうか。
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